流刑地

作品の感想とか諸々、ネタバレありです。

フロントメモリー

梅雨がさっさと明けて、熱気が纏わりつくような嫌な陽気に紫陽花が日陰で所在なさそうに咲いている。 思えば転勤してきて一年が経つ。 色々あった気がするが、別段一歩前に進んだようにも思えない。 くだらない揉め事に巻き込まれて、そんなのばかりだ。 た…

冬の花、枯れて

春の桜も散った。 木々が緑に色付き始めた。 毎日峠を越えて通勤してると、より季節の変わり目が視覚化される。 季節を越えると、まだ生きているんだ、なんて思う。 喫煙というぬるい自傷行為を繰り返して、紙タバコ自体の文化もゆっくり死んでいこうとして…

八本脚の蝶

文庫本にして約500頁。 片手で持てる重量。 彼女の最後の2年間の思索の断片。 纏めてしまえば呆気なく思える重量。 真摯にこの本に向き合ったのであれば、この本は氷山の一角でしかなく、背景に莫大な図書館が存在している感覚になるはずだ。 その最深部に辿…

雪が降って

雪って特別で、ふわふわと、綺麗なものだと思っていた。 私の出身地は、数年に一度積もらない程度に雪が降る。だから私にとって雪は特別なものだった。 一番印象に残っているのは、八王子に住んでいた頃の雪。朝、目が覚めてカーテンを開けると、雪が積もっ…

冬の磁石

マンションを出て、駐車場への短い距離は無駄に開けていて、凍えるような朝に空を見上げては寒々しいなと思う日々である。 冬のせいか、日々の仕事による磨耗か、それはおいておいて、少し前まで私は何に熱中していたんだろうか思い出せなくなっていた。 劇…

秋の気配のアルペジオ

テカテカと照らす太陽の熱もいつの間にか雨が集中しているうちに、何処かへ消えた。 アスファルトで土に還れなくなったセミの亡骸を踏み潰してしまった夜、新天地での秋を感じていた。新しい土地に来て2ヶ月が経つ。 相変わらずカーナビもなければろくに外出…

Wonder Palette

生まれた街が嫌いだった。 昔から良い思い出がなかったから。 上京した時は踏み潰すような気持ちで故郷を出た。 戻ってくることになって、あぁ結局なにも自分は変わってないんだって思い知らされた。 そしてまたこの街から旅立とうとしている。 車から眺める…

昔の話

記憶とは不思議なもので、水面下に沈んだ思い出がフワッと水面上に浮かんだりする。 昔、MMORPGをやっていた。ラグナロクオンラインだ。その時入ってたギルドのことをなんとなく思い出した。 その時のマスターが絵が上手くて、その人にあたりのとり方とか、…

クラムボン

少しずつ春の足音が聞こえてきた。 2月が終わると淡路島の水仙を今年もみれなかったのかと小さな後悔をする。 昨日みた夢を思い出せないような後悔。楽しいと思えることが減った。コロナという病は現実を少しずつ不便にしていった。 内臓が重く感じる。 その…

トップをねらえ!

あ、そういえばみてねえや。 ぐらいに軽い気持ちでみた。軽い気持ちでみていいあれじゃなかった。 1話はどこかでみたことがあるようなパロディー色が強く、とっつきやすい造りになっている。 が、4話あたりから流れが大きく変わってくる。5話の合体シーンや…

後ろの正面

アニメが好きだ。 子供の頃からずっと。 大学生の頃なんかは現行の深夜アニメに加えて、少し昔の深夜アニメにも手を出していた。今でもアニメは好きだ。 でも最新の深夜アニメをみることはなくなって、より過去のアニメをみている。 2000年代初期あたりの深…

エピローグ ~親しき仲間へ~

どん底にいる感覚に陥っている。 思い浮かぶ情景は雨である。 ただその自分のどん底の程度なんてたかが知れたもので、まだまだ沈んでいく余地があるのだ。コロナの長期化に伴って人類の余裕みたいなもの は確実になくなった。 ただそのなくなった規模が大き…

境界線上の

生きてるのか死んでいるのか。 辛いのか辛くないのか。 そう聞かれればわからないと答える。 楽しいと思えてたことがつまらなくなって、空白みたいな休日が増えた。 空の高さを気にすることが減った。 白い息を吐いてやっと寒さに気がついた。 熱いものを飲…

降らない雪

冬といっても私の地域では雪は滅多に降らない。降っても翌日には泥と合わさってぐちゃぐちゃになる程度しか降らない。 雪が降る冬というのは素敵な思い出ができるものなんだろうなと夢想している。それは良し悪し関係なく。 だから私の冬はどこまでも寒いだ…

君の話

君の話 (早川書房)作者:三秋 縋発売日: 2018/07/31メディア: Kindle版「君は君の不幸の中で幸福なのだ」というフランツ・カフカに宛てた友人の手紙の中に書かれていたフレーズを三秋氏はインタビューで引用していたけれど、 スターティングオーバー、三日間…

君と彼女と彼女の恋

君と彼女と彼女の恋。-Song Collection- 『君と彼女と彼女の歌。』アーティスト:岩瀬敬吾,Swinging Popsicle,多田葵,いとうかなこ発売日: 2013/08/28メディア: CDはじめてギャルゲーやった時、一人のヒロインのルートを終えて、疑問に思ったことがある。 さ…

降らない雪

土地柄めったに雪はふらない。 ただ乾燥した優しさのない風が人としての体温や感情を削っていく。 なにもなかったように過ぎていく毎日はいつか来ることを怯えていた明日の残骸で、今はやがてくる明日に怯えて身動きできない。そんな毎日。 このままではいけ…

薄明光線

寒さで目を覚ます日が増えた。 安っぽいクリスマスソングが嫌に耳につく日が増えた。 自分のやっていることがズレている感覚を持つ日が増えた。 橋の向こうの空に見える薄明光線に目を奪われる日が増えた。 冬は順調に私を排除しようとする。新型コロナが流…

ナルキッソス スミレ

ナルキッソス3 -ステージなな-メディア:なんだか最近とてもまいっていて、なにをどうしても気が晴れない。 こういう時に物語に手を伸ばすのが、物語を必要とする人間なのだと思う。ナルキッソス1,2,姫子エピローグとやってきて、(0もあるけど)ナルキッソスシ…

冬の足音

台風が気温が持っていってしまった。 安物の革ジャンを取り出して着てみる。 ネットで買ったからサイズがいまいちあってなくて小さかった3年前。余裕を持って着れるようにいつしかなっていた。 今も変わらないのは煙草の煙と重苦しい空だけだ。白昼夢と青写…

秋の逡巡

夜中になると、虫の声と涼しげな風が窓から入ってくるようになって煙草によく合う、すっかり秋になった。季節の変わり目は変調しやすくてどうもいけない。 頭痛はするし、気持ちも陰鬱になる。 職場が移動になって2ヶ月になろうとしている。 どうも小さな常…

私とイラストについて考える

はじめてネットにイラストをあげたのが2014年末。 最初は透明水彩で着色していた。 気がつけば2020年に今日に至るまで多くはないが描き続けてきた。 さよ朝のイラストコンテストで賞をとったり、vtuberのイラストで多くの人にみてもらう機会も頂けた。 さよ…

夏の香りの雑木林を抜けて

仕事帰りに煙草を吸って、夜中の静寂に涼しげな風だけが優しく私を通り抜けていく。 まだまだ厳しい残暑ではあるが、夏が終わったんだと感じとる9月1日。色々な事が出来なかった夏だった。 年々私が掴みたかったと焦がれる夏から遠ざかっているという感覚…

劇場版Fate/stay night HF spring song観た

映画館で映画をみるとき、私はとりあえずキャラメルポップコーンとコーラMサイズを注文する。 劇場版の雰囲気を楽しみたいって理由だけだが。 とはいえ大体8割食べれれば満足する。さて、fateシリーズは長年、オタクコンテンツとして君臨しており、エロゲや…

ATRI

【Amazon.co.jp限定】ATRI -My Dear Moments- Original Soundtrack(店舗共通有償特典:「キャラクターデザイン・ゆさの描き下ろしB2タペストリー」付)(メーカー特典:「キャラクターデザイン・ゆさの描き下ろし複製色紙」付)(オリジナル特典:「B3クリアポスタ…

ナルキッソス

桜も気がつけば終わってしまい、5月も近いというのに肌寒い日が多く感じる。春すら感じる余裕もなくなったのかなぁと少し寂しく思う。そんな春に届かず枯れてしまう花がある。 水仙、ナルキッソスである。ナルキッソスというゲームを知っているだろうか。 フ…

終わる世界とバースデイ

歳を重ねる毎に、いつしか自分の誕生日が特別な日であるという気持ちが薄くなっていく。 子供の頃はあんなに楽しみだったのに。誕生日というものを自分の中で時々どう処理すれば良いのか思考を巡らせていた。 例えば誕生日をテーマに物語を考えたり、或いは…