流刑地

作品の感想とか諸々、ネタバレありです。

降らない雪

冬といっても私の地域では雪は滅多に降らない。降っても翌日には泥と合わさってぐちゃぐちゃになる程度しか降らない。
雪が降る冬というのは素敵な思い出ができるものなんだろうなと夢想している。それは良し悪し関係なく。
だから私の冬はどこまでも寒いだけの耐え難い季節なのだろう。

自分が死ぬ季節を昔から感じていた。
もともと日照時間が自分の体調に深く関係している体質で、冬は身体的に精神的に脆弱だった。
結果、皮肉にも自分が生まれた季節と同じ季節に自分が死ぬものだと思っている。

だからいつでも夏に憧れている。夏への扉を探している。夏になっても夏を探している。私の求める夏など空想に過ぎない。終わらない夏休みを夢想している。

それでも少しの希望がある。この時期の淡路島には水仙が咲くらしい。
行っても何も変わらないのはわかっている。何かが始まるわけではないのはわかっている。
わかっていても朝の通勤の車で、いつも曲がっている方向と逆にハンドルを切ったら。
それは淡路島に繋がっているんじゃないか、夏への扉に手をかけるようなものなのではないか。
私の期待の先に私の期待通りのものがあったことなんてない。いつだって時代に噛み合ってない私にあるのは極々当たり前の他人の普通が待っている。それは裏切りじゃない。私がズレているだけ。
それでもこの私の期待は間違いないじゃないって信じて、今日もいつもと同じ方へハンドルを切るのである。