流刑地

作品の感想とか諸々、ネタバレありです。

秋の気配のアルペジオ

テカテカと照らす太陽の熱もいつの間にか雨が集中しているうちに、何処かへ消えた。
アスファルトで土に還れなくなったセミの亡骸を踏み潰してしまった夜、新天地での秋を感じていた。

新しい土地に来て2ヶ月が経つ。
相変わらずカーナビもなければろくに外出も出来ないが、生活の基盤は整って、この地への馴染みが深まってきた。
大きな不満はない。
仕事も忙しいが、悪くない。
少し出れば買い物に不自由もない。
いうならば休日の空虚さだろうか、何故か焦りを感じる。本当にこうしていていいのかって。
これに答えなんてないだろうけど、どこか死を意識して生き続けていたせいだろうか。
冬の淡路島の冷たい海に足を浸ける感触を想像している。

紅葉の秋を迎えて、息が白くなる冬が来て、ここは雪は降るんだろうか。それを超えれば春が来て。そうなればここで一年過ごしたことになる。
そこまでくればちゃんと調子は上がっていくのだろうか。
ロビーを出て、駐車場に向かうまでの開けた景色を、意識して見続けることはできるのだろうか。