流刑地

作品の感想とか諸々、ネタバレありです。

Wonder Palette

生まれた街が嫌いだった。
昔から良い思い出がなかったから。
上京した時は踏み潰すような気持ちで故郷を出た。
戻ってくることになって、あぁ結局なにも自分は変わってないんだって思い知らされた。
そしてまたこの街から旅立とうとしている。
車から眺める梅雨が明けたこの街が、今までより少しだけ鮮やかで。
旅立つには少し戸惑いがあることに気がついた。

旅立つ事が決まってから、色々な人の感情が顕になって、今まで見て見ぬ振りをしていた。
垂れていた蜘蛛の糸を自分は掴もうとしていなかった。
誰のせいでもなくて、自分のせい。

自分が持っている色とその補色。
今はそれが混ざって黒く濁っている。
繰り返して、失っていくんだもっと色々と。
蝉の声がし始めて、入道雲が浮かぶ水色の季節。
濁った自分と対比されて、歪さが露見されるみたい。

色は混ぜ合わせるともう元には戻らない。
濁ったまま、この街を出る。
やっぱりこの街は嫌いだ。

またいつか帰ってくるよ。