流刑地

作品の感想とか諸々、ネタバレありです。

2022-01-01から1年間の記事一覧

フロントメモリー

梅雨がさっさと明けて、熱気が纏わりつくような嫌な陽気に紫陽花が日陰で所在なさそうに咲いている。 思えば転勤してきて一年が経つ。 色々あった気がするが、別段一歩前に進んだようにも思えない。 くだらない揉め事に巻き込まれて、そんなのばかりだ。 た…

冬の花、枯れて

春の桜も散った。 木々が緑に色付き始めた。 毎日峠を越えて通勤してると、より季節の変わり目が視覚化される。 季節を越えると、まだ生きているんだ、なんて思う。 喫煙というぬるい自傷行為を繰り返して、紙タバコ自体の文化もゆっくり死んでいこうとして…

八本脚の蝶

文庫本にして約500頁。 片手で持てる重量。 彼女の最後の2年間の思索の断片。 纏めてしまえば呆気なく思える重量。 真摯にこの本に向き合ったのであれば、この本は氷山の一角でしかなく、背景に莫大な図書館が存在している感覚になるはずだ。 その最深部に辿…

雪が降って

雪って特別で、ふわふわと、綺麗なものだと思っていた。 私の出身地は、数年に一度積もらない程度に雪が降る。だから私にとって雪は特別なものだった。 一番印象に残っているのは、八王子に住んでいた頃の雪。朝、目が覚めてカーテンを開けると、雪が積もっ…

冬の磁石

マンションを出て、駐車場への短い距離は無駄に開けていて、凍えるような朝に空を見上げては寒々しいなと思う日々である。 冬のせいか、日々の仕事による磨耗か、それはおいておいて、少し前まで私は何に熱中していたんだろうか思い出せなくなっていた。 劇…