流刑地

作品の感想とか諸々、ネタバレありです。

雪が降って

雪って特別で、ふわふわと、綺麗なものだと思っていた。
私の出身地は、数年に一度積もらない程度に雪が降る。だから私にとって雪は特別なものだった。
一番印象に残っているのは、八王子に住んでいた頃の雪。朝、目が覚めてカーテンを開けると、雪が積もっていた。定期試験の朝だったと思う。
驚いたのはその静けさだった。学校まで歩いていったが、自分が新雪を踏む音だけしか聞こえなかった事は鮮明に覚えている。

愛知に来て半年、もう既に数回雪が降っている。積もりはしないが。
この辺りはよく降るのかと尋ねると、こんなに降るのは珍しいと返ってくる。
未だにこの街に慣れない。
同じ道を行って、帰ってくる。その繰り返し。
カーナビ無しではどこにも行けないし、車屋の運転も得意ではない。
結局、年末年始もここで普段通り変わらず過ごした。

ある朝、
ふわふわと舞う雪に朝日が反射して、眼前に美しい光景が広がった。
なのに、私の心は動かなかった。
綺麗とかそういう感想も抱かず、寒さで震える手をどうにかしたかった。
吐く息は白く、タバコの煙よりはやく消えていく。
そういえばタバコを吸う量が増えた気がする。
私自身、変わったんだろう。
知らぬ街で見る雪は、退屈で、冷たいものだった。